インプラント治療とは(長所と短所)
人工の歯根を歯ぐきに埋めて、その上に被せ物をすることで失われた歯を補う治療です。
ブリッジ・入れ歯(義歯)・インプラント・歯の移植の4つが、一般的に失われた歯を補う治療の選択肢として挙げられ、それぞれに長所・短所があります。
インプラントと天然歯
(当院の義歯治療についてはこちら、
歯の移植治療についてはこちらをご確認ください。)
【インプラントの最大の長所】は、残っている歯の負担を軽減できるところです。
例えば、ブリッジは両隣の歯を削って連結する治療です。
削ることによる歯の負担、失われた歯が支えていた力の負担など、どうしても両隣の歯に負担を強いることになってしまいます。(下のイラスト参照)
これにより、
・ブリッジの接着剤が徐々に破壊され、むし歯が再発するリスクが高まります。
・力の負担が大きいと、歯周病の進行のリスクが高まります。
また、被せ物で連結してある部位は、歯みがきが難しくなるため、むし歯・歯周病のリスクは高くなります。
一方で、インプラントは両隣の歯の負担を大きくせずに、小さくすることができます。
もちろんブリッジや入れ歯でも、ある程度の機能回復(見た目を改善したり、噛めるようにすること)は可能ですし、保険治療であれば費用も抑えることができます。
ただし、入れ歯では両隣の歯を削る量は少ないですが、取り外しできる分、噛む力をしっかり支えるのは難しく、結果として残された歯の負担は大きいままです。
下のグラフを見てみてください。
歯が20本より少なくなると、曲線の傾きが急になりますよね。
これは、一定の本数の歯を失うと、そこからは歯を失うスピードが加速してしまうことが分かります。
つまり、歯を失うことを食い止めるためには、歯の負担を増やさない形で補っていくことが必要です。
歯の欠損(歯を失うこと)を食い止められる唯一の方法は、インプラント治療であるとよく言われるのは、このことが大きな理由です。
ただし、どんな治療にも言えることですが「インプラントにも短所」があります。
・外科処置が必要
→飲んでるお薬や年齢、体調が優れない方には難しいことがあります。
・保険適用外
→1本の治療あたりおよそ40万円ほどの費用がかかります。
・治療期間が長くなりやすい
→治療の成功のためには、CT撮影や模型上での綿密なシミュレーション、インプラントが骨に結合するまでしっかり待つなど、確実にステップを踏んで治療が必要な分、他の治療よりも治療期間が長くなる傾向にあります。
・長持ちのためにメインテナンスが重要
→「インプラント周囲炎」といって、インプラントも歯周病のような状態になって悪くなることがあります。
また人の顎の動きは常に変化しうるものなので、定期的な噛み合わせのチェックを怠ると、一部が壊れるなどといったトラブルも起きることがあります。
インプラントに限った話ではないですが、このようなトラブルを未然に防ぐため、3~6か月に一度、歯科医院でのメインテナンスを受けていただくことをおすすめします。
※当院では、特定の治療方法を強くすすめることはありません。
それぞれの治療には必ず長所と短所がありますので、患者さんのお口の状態に合わせてどうするのがよいのか、一緒に考えることができればと思っています。
ーーーーー インプラント治療の手順 ーーーーー
①CT撮影、診査
シミュレーション
②インプラント埋入
③骨と結合するのを待つ
(2~6か月)
④頭を出す処置、
型取り
⑤被せ物の装着
※ 骨と結合するのを待つ期間は、インプラントを設置した骨の状態などによって左右されます
※ ④の頭を出す処置(二次手術)は、骨の状態などによっては必要ないことがあります
実際のインプラント治療例
※手術時の写真は白黒にしていますが、苦手な方はご注意ください。
また、資料の使用は患者さんに許可をいただいております。
インプラントを理想的な位置に埋入する際に、
十分な骨の厚みが確保されているか、
安全な治療が行えるかを確認します
① CT撮影、診査診断
CT撮影・治療のシミュレーション
② インプラント埋入
奥歯(大臼歯)が2本欠損しています
麻酔後、2本のインプラントを
埋入します
丁寧に縫合します
③ 型取り 上部構造セット
インプラントが骨と結合してから、頭を出す処置をします
治療後のレントゲンです
インプラントの周りの骨は安定しています
型取りをして、
セラミック冠を装着しました
インプラント治療 前後
自由診療
治療回数:およそ10回
治療費:¥385,000~/1本(税込)
(被せ物の材質などにより異なります)
治療に伴うリスク
・治療後、インプラント周囲炎のリスクや、破損など機械的なトラブルが起きる可能性があります
※すべての症例写真は、患者さんの同意をいただいて掲載しています
また、医療広告ガイドラインに則り、治療にかかる回数・費用の目安、治療に伴うリスクを併記しています
インプラント治療 よくあるご質問
治療にかかる期間や回数は?
単純なケースであれば、治療開始~冠のセットまで、
最短2か月半です。(通院回数は5~10回)
治療期間は、お口の中の状態や骨の質などに左右される
ため、1年程度かかることもあります。
治療に伴う痛みや腫れは?
局所麻酔をしますので、処置中の痛みはほとんどありません。
歯ぐきの切開などを伴うため、処置後に痛みや腫れが出ます。
通常であれば、痛み止めで十分緩和できる程度です。
個人差があり、痛み止めを飲まずに済んだ方もいれば、
2,3日の間痛み止めを飲んだという方もいます。
腫れが強く出ることはあまりないですが、もし腫れが出ても、
ピークは2,3日ほどで、その後落ち着きます。
インプラントはどれくらいもつ?
10~15年間の生存率は上顎90%、下顎94%というデータが
支持されており、100%一生もつものではありません。
歯周病の状態、咬む力の強さ、定期的なメインテナンスを
受けているかなど、様々な要因に左右されます。
長期に安定した状態を維持するためには、3か月~半年に
1回のメンテナンスが必要です。
本当にいい治療なの?
治療についてメリット・デメリットを正しく理解して
いただいていれば、非常に有益な治療であるといえます。
「他の歯を削ったり負担を増やさずに、失った歯の機能を
回復する」ことは、ブリッジや入れ歯にはできない非常に
大きなメリットだからです。
当院では出来る限り、歯の保存に努めるようにしていますが、
どうしても保存が難しい場合は、インプラント治療を
おすすめすることが多いです。
しかし、インプラントは自由診療のため、治療費は決して
安価ではありませんし、外科処置を伴う治療でもあります。
不安な点などを十分に歯科医師と相談し、納得された上で
治療方針を決めていただきたいので、どうぞご相談ください。
インプラント治療ができない人はいる?
以下の方は、適応になりません。
・年齢がかなり若い方
(顎の骨の成長の関係で、未成年には原則行われません)
・妊娠中の方
・重度の骨粗しょう症の方
・未治療の歯周病があり、病状が安定していない方
・病状が安定していない糖尿病など、免疫力の低下がある方
・血液疾患や循環器疾患のある方(程度によります)
・顎の骨の厚みが非常に少ない方